材・図面持ち込みの仕事で重ねても使えるベンチチェストです。ＬDとキッチンとの空間の仕切りとしてお使いになるとのことですので裏面もムク板の背板が入っています。材は引き出しの底板の合板、中箱のカツラ以外全てクルミ。一番上に乗っている書棚の甲板のみは３５ミリ厚ありこの板は鬼グルミらしい硬さがありますがあとの２４ミリ仕上がりの板はやや軟質ですので仕上げ後に綿毛羽立ちが出ないように注意しました。レイアウトに自由度がありますし別々の部屋で使ったり重宝していただけるのではないでしょうか。作りは単純ですがしっかりした中仕切りも入っていますので腰掛としても十分機能します。

　引き出し部の引き手を掘り込みにしたのは出っ張りが足に当たらないようにです。深く指が入って掛かり面を大きくしたいので一度穴を貫通させて裏から当て物を接着し細釘打ちしています。引戸の引き手は爪が引っかかって崩れが心配なのでブラックウォルナットの硬いところをあてました。帆立と甲板のアラレ組みで見付きを帆立通しにしたのは重ねた際に見栄えがいいように、板が瘠せても安定のいいように、または甲板にキズがつきにくくしたかったためです。その他気になるのは角の丸め具合でしてシャープな感じで小さな面取りで済ますか安全優先で大きく落とすかお好みがありますし、材がどれくらいの硬さなのかを含めて出来上がりから再度確認していただこうと考えています。また将来小さなお子さんの育つ部屋に置かれることになったらいつでも角を丸めに削りに出かけるとはお伝えしてあります。

　ご新築のお宅の私室の実用家具なのでコストを抑えてもらえないかとのご相談の結果手持ちのやや難ありを含めた材の使用で合意が得られたそうです。材に桟積みの時に出来る灰汁シミが少々残っているのはそんな理由があるためです。注文制作のメリットはいろいろ融通がきくことです。どうしても交渉の時間は取られることになりますがその分の見返りは驚くほど大きなものになると思いますよ。